不思議な旅人
大好きな彼にそっくりな
長身の「彼」は言ったのだ
「自分は『彼女』を憎んでいない」
『彼女』が一体何なのか
オレにはわかる術もない
『彼女』が何をやったのか
オレが知っても意味がない
気になることはひとつだけ
「彼」が大好きな彼に似て
「彼」は顔に酷い傷の跡
「彼」の傷は火傷跡
「彼」は言葉を置いてゆく
「頼んだ」だけを置いてゆく
この苦しさは何なのだ
この切なさは何なのだ
去りゆく姿ですらとても
似すぎて苦しいこれ如何に
気づけば大好きな彼の横
「彼」は幻、「彼」は夢
気づいていないわけではない
「彼」は彼の血族だと
認めたくないだけなのだ
知りたく無かった青い糸